Departure's borderline

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これが、16歳が描く20代。-青羽 悠『星に願いを、そして手を。』読了メモ

ずっと気になっていた、第29回小説すばる新人賞、史上最年少受賞作。当時作者である青羽先生は16歳。2000年生まれ。現在も10代なのかぁ・・・、若いなぁ。

10代の描く「大人になったばかりの大人」視点は、あまりに脆く、儚く、夢に満ちたものでした。『星に願いを、そして手を。』です。

 

星に願いを、そして手を。 (集英社文庫)

星に願いを、そして手を。 (集英社文庫)

 

2017年2月に単行本発売。その後2019年2月に文庫化。昨日たまたま訪れた書店にて、文庫本が堂々と目立つところに積まれているのを発見。「ああ、数年前に話題になったアレね・・・」と手にとり、昨日2時間ほどでイッキ読みしてしまいました。

 

以下、多少のネタバレあります。

  1. 荒削りだが、伸びしろしかない爽やかさ
  2. 16歳の青年が描く、「23~24歳の大人」
  3. 稚拙なようで作り込まれた謎解き要素
  4. まとめ

 

 

1.荒削りだが、伸びしろしかない爽やかさ

青羽悠先生自身、この作品が長編処女作だそう。文筆業を営む人であれば、誰しもがやっている、ネタ(?)が降ってきたらメモをする、といういわゆる「散文」しかやってこなかった・・・というから驚き。次第に、その散文が集まってきて、何かカタチにしなければと思ったんだそうです。(小説すばる新人賞対談より)

編集者目線で読むとするならば、確かに荒削り。ストーリーの構成や登場人物の動かし方、言葉選びに、やはり未熟な部分は見え隠れします。・・・担当編集さん、相当校正に苦労したのではないだろうか。

 

ただ、今後青羽先生が本格的に長編小説をバンバン世に送り出すような作家になる予感は、ヒシヒシと感じます。その理由が、物語一本に対し、軸がまったくブレないこと。

一人称の移り変わりは早いのだけれども、それでもすんなりと視点の移り変わりができる流れの良さ。登場人物の個性が、平凡だけれども立っており、しっかり基板が出来上がっていることは確かです。

 

爽やかに、そして懐かしく描かれる、登場人物たちの高校時代。・・・を、現役高校生が書いたのか。未来からやってきたんじゃないか。それかジョン・タイターかな。

 

 

2.16歳の青年が描く、「23~24歳の大人」

登場人物は4人。同じ町の同じ中学、高校に通う同級生で、それぞれ宇宙に想いを馳せ、プラネタリウムと図書館が併設された施設「科学館」にたむろする少年、少女達です。

彼らは成長と共に次第にすれ違い、再開を果たすのは、23歳、もしくは24歳になったころ(作中に名言はありませんが、ひとりが大学院生、ひとりが就職1年以上という記述があるため、この年齢と想定できる)。科学館の館長のお通夜での再開でした。

彼らは、科学館に就職したひとりにいざなわれ、館長の遺した謎を解き進めていきます。途中、館長の孫と、その友人も加わり、館長とはいったい何者だったのか・・・そして真相は・・・を解き明かしていく、青春謎解き系の小説です。

 

つまり、私とほぼ、同い年。自分自身に主人公ら4人の姿を重ねながら読み進めることができました。ここでもう一度議題に上げたい、青羽先生の年齢問題。私自身が「ああ、わかるわかる。こういう思い、したことある」という感情表現が、荒削りではあるものの描かれており、16歳が描く20代は、やけにリアルなんだな、と思いました。

 

今後に期待したいのが、恋愛に対する描写。あくまで爽やかだった。いやまだ16歳だから当たり前か。1対1の、歪みのないまっすぐな恋愛感情を相手に伝える、そんな恋愛描写が多かったです。

この文体なら、もう少しドロッとした恋愛描写も取り入れたらおもしろそう。あるいは、恋愛に振らないほうがいいのか。

 

もう一つ期待したいのは、「大人になる」という事実に対する責任。夢と希望を乗せた小説であっただけに、「大人になって、あらゆることに責任を持たねばならない」というリアル感は薄かったように感じます。

きっとこの部分に関しては、青羽先生が20代になったときに感じることなんだろうな。作家として歩むのも間違いではないけれど、もしかしたら社会人(特に正社員という荒波)を一度経験したほうが、今後の作品にイイ影響を与えてくれるかもしれないと思います。

 

 

3.稚拙なようで作り込まれた謎解き要素

 残念ながら、私は謎解きというジャンルが苦手で、今までできるだけ推理小説などは避けて通ってきました。今回、謎解き要素がある本とも知らずに読んだわけですが、一見稚拙なんですよね。

いやありえんわこれ笑笑笑ってなるヒントが各所に撒かれ、こじつけっぽさやわざとらしさもないわけではありません。

 

ただ、気に入った部分として、謎が全て解けた時の快感はありましたね。ああ、こう繋がるのね。わざとらしさはあったけど、まあこう繋がるならアリかもね、と納得できるだけの道筋。

最後の全てが繋がった時に「納得」が来るのであって、読み進めている時の感想はあくまで「稚拙」。残念ながら、これについては今後に期待、を繰り返すほかありません。

 

 

まとめ

話題に乗っかっている印象も否めなかった作品でしたが、読んでみて、今後に期待のできる作家さんが発掘された、という喜びを感じることはできました。

若いうちにデビューすると、やはり尻すぼみになってしまったり、「結局最初の話題性だけ」と言われることもある小説業界ですが、そうはならない気がしています。青羽先生の努力と集英社の育成に大いに期待します。

 

すでに青羽先生も19歳。来年には20歳になります。年齢的にはもう大人。思春期を超え、視点・目線が成長と共に変わってくる時期です。これからどんどん大人の目線になっていき、新しい物語を紡いでいくのを楽しみにしています。