Departure's borderline

フリーランス編集/ライターのいろいろな興味事

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ぜんぶイイ楽曲、が詰まったアルバムはアリなのか -King Gnu 3rdアルバム「CEREMONY」

 

正直全部イイです。

「開会式」というタイトルがつけられたインスト曲、タイアップ曲4つ、内キラーシングル「白日」。「幕間」を挟んで「飛行艇」から始まるタイアップ曲3つと2つのバラード。そして常田さん渾身のチェロが呻る「閉会式」…。

 

全部、全部イイ。1つ1つを取り出してみたら、全部最高なんです。

ただ、私はこのアルバムに対して物語を感じられなかった。そういうお話です。

 

 

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発売日。もちろん朝イチで「CEREMONY」を聞きました。

 

「開会式」と名付けられたその鋭いインスト曲は、何かの始まりを連想させるワクワクが詰まっていて、音もキラキラと輝いていて。「ああいい曲だ」と思いました。

 

前奏ナシにツーボーカルから始まる「どろん」。c-mollの暗さと常田さんの低音、井口さんの高音がしっかりと活かされた、ドレミファソ、というスケールを用いたサビはさすが。

 

続く「Teenager Forever」。見た目はちょっと老けてるけど、まだ20代後半という彼らの若さがしっかりと入れ込まれ、数年温められた曲をここで解放できることのよろこびを感じられる1曲。「ユーモア」は優しく、たなびくようなピアノが印象的です。

 


King Gnu - Teenager Forever

 

そして、彼らの代表曲かつ、最大のキラーシングル「白日」。言うことがない。

 


King Gnu - 白日

 

「幕間」を挟んで、これもずっしりと低音が鳴り響く「飛行艇」。リズム隊の正確かつ重さを残しながら掴めそうで掴めない音作りには脱帽。

 


King Gnu - 飛行艇

 

「小さな惑星」「Overflow」「傘」と”彼ららしい”曲が並び、常田さんの1人ボーカル曲である「壇上」。井口さんがANNで話していましたが、「King Gnuが解散したときのことを想像して描いた」とのこと。リリックの言葉選びももちろんですが、常田さんの声と静かなストリングスが相まって、非常に良い一曲。そして常田さんのチェロ、「閉会式」…。

 

 

そう、全てが最高なんです。全てが「最高の曲」なんです。でも「最高のアルバム」ではないのかなと思いました。

 

捨て曲など1曲もない。

だからこそ、1曲1曲がそこで完結してしまっていて、King Gnuのベストアルバムなんじゃないかと錯覚してしまうような感覚で。私としては、もっと彼らのストーリー性を感じたかったと思うし、彼らならできる、いや前はできていたのでは、と思ってしまうのです。

 

 

それにしても、果てしなく褒め言葉しか浮かばない1枚。

喩えるならば、ジグソーパズル。

このアルバムは、全てのピースがハマったジグソーパズルなのに、そのジグソーパズルには絵がないんです。絵がないということは、それだけ完成させるのは難しいはずなのに、完成品はなにか物足りなさを感じさせる。観る者、聴く者にストーリーを欲させる。

 

もしかして、この「CEREMONY」というアルバムはKing Gnuの策略なんじゃないだろうかと思ってしまいます。次、これを果てしなく上回る、壮大な物語が真っ逆さまに落ちてくるんじゃないだろうか、って。

 

期待を良い意味で裏切り続けたKing Gnu、最高のストーリーはまだおあずけってか。最後までカッコイイなー(あくまで私的な憶測)。