Departure's borderline

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これはまだ、スタートに過ぎない。 - [Alexandros] 「THIS SUMMER FESTIVAL 2020」の現地で感じたこと

 

rockin'on 内「音楽文」にて掲載していただきました。

ongakubun.com

 

1枚15,000円のワンマンライブチケット。

今まで、その額は彼らに対して出したことがなかった。

でも、出してでも行きたいと思った。

 

2020年8月15日(土)、ZeppHanedaのこけら落とし2日目に開催された[Alexandros]のFC限定ライブ「THIS SUMMER FESTIVAL 2020 FC限定 CREWの為のリクエストパーティー」。キャパは約500名。いくらFC限定とはいえ、無理だろうと思いながらも、長年ドロスを追いかける友人とともに応募した。

 

当落発表メールを、何回見直したことだろう。夢じゃないだろうか、本当に当たってしまったのだろうか。

 

「当たった、かも。」

「当たってる、ね。」

 

スクリーンショットを添えて送った友人へのLINEは、彼女の返信とともに確信に変わった。行ける。ライブに行ける。しかも、いちばんだいすきな彼らのライブに!

 

ライブハウスに行く。この半年ほど、私たちが待ち焦がれていたことだ。生音を浴び、音楽を称えて手を掲げる。なんていい光景だろう。想像するだけで涙が出そうだ。私たちは二人で、当日はどんなセトリになるのか、はたまた半年ほど待ち望んだ景色はどんなものだろうかと、胸を高鳴らせてその日を待った。

 

 

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「ごめん、行けなくなった」

 

彼女からのLINEが届いたのは、ライブ当日を3日後に控えた日のことだった。

彼女の職場で、コロナウイルス感染者が出たのだという。遠方に住む彼女は東京に来ることができなくなった。新幹線も、ホテルも手配した後のことだった。

 

私もキャンセルして、公式チケットリセールに出そうか。まだ間に合う。15,000円のチケットを彼女だけ潰してしまうのは気が引ける。そう考え、彼女に伝えると、こう返ってくる。

 

「行ってきてほしい。私の分以上に楽しんでくれなきゃ許さないよ」

 

そう告げた彼女はどれほど悔しかったことか。まだ襲い掛かるコロナウイルスという脅威に、半年ぶりだと泣いてよろこんだ私たちはまだ勝てないでいる。

 

 

**

 

ドロスのライブを一人で見に行くのは初めてだった。いつもは必ず、隣に彼女がいた。ファンになってもう何年が経つだろう。思い出せないほどに長い間、彼女はずっと隣で私とドロスを見てくれた。

 

現地に着くまでの道のりも、開演を待つ間も、このときめきを共有できる人がいないさみしさを噛み締める。一人ライブは慣れている。でも、ドロスを見るなら彼女と二人がいい。彼女が座るはずだった、2席隣の空席を何度も見つめた。

 

 

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リクエストパーティーは最高だった。さすがはFC会員限定、「ライブで盛り上がる定番曲」などありやしない。ワタリドリも、Starrrrrrrもなかった。ただ、私たちファンが今聞きたい曲が詰まった、最高のセトリだった。リクエストアンケートを15位から1位まで順に演奏していくというセットリスト。1位は、[Alexandros]が[Alexandros]になる前の、[Champagne]最後の曲、「Plus Altra」。

 

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But here we are standing

<<だけど僕たちはここに立っている

 

right in front of you, people

<<君、そしてみんなの目の前に

 

But we knew it from the start

<<だけど俺らはわかってる。まだスタートに過ぎないと

-「Plus Altra」

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私の友人だけでなく、このライブに来たくても来られなかったすべてのファンに。はたまた、このスタートを見届ける証人となった私たちに刻み付けるように。強く語りかけてくれているような、1位「Plus Altra」だった。

 

 

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まだしばらく、コロナウイルスとの闘いは続くだろう。それでも、キャパを減らしてでも、彼らのようないわゆるモンスターキャパシティバンドが有観客ライブを開いてくれた。音楽界にとって“最初の一歩”になったことは間違いない。

 

彼らはステージに立っている。

私、そしてみんなの目の前に。

だけど全員がわかってる。まだスタートに過ぎないと。

それでも全員が信じてる。そのスタートは、彼らが切ってくれたのだと。

 

ライブを終え、ZeppHanedaを後にした私は彼女にLINEを送った。

「最高だった。次は現地で。」