Departure's borderline

フリーランス編集/ライターのいろいろな興味事

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めちゃくちゃ日本語が好きなのに、「専門性」に負けたっていうおはなし

 

今のところ、二番手。

 

文章を生業にしている以上、文字を書く・編むことには非常にプライドがあるし、負けたくないという気持ちが大きいです。

 

なぜなら、私は日本語が好きだから。毎日毎日文章に向き合っていると、手に取るように自分の「好き」が増していってしまって、今もこれからも、死ぬ直前まで、日本語が好きという気持ちはアップデートされていくんだなと思うんです。

 

この「好き」って気持ちは、誰にも負けないと思っています。どのライターよりも、どの編集者よりも。

 

 

でも、それだけじゃライター・編集者として食べていけない。どんなに日本語が好きで、文章が上手でも、「専門性」がないと、この業界では生きていくのが難しいです。

 

私の専門としてポートフォリオに据えているのは、「PR・紹介系」「エッセイ」「野球」。さらにラジオやグルメなどのお仕事がたまに。手広くやらせていただいていますが、広く浅く主義だからこそ「この分野はMao.さんに頼もう」と思っていただけることが少ないんですよね。

 

 

先日、数年前から親しくしていただいている編集者の方とご一緒したとき、 「Mao.さんはすべてキレイに仕上げてくれるし、人の言葉を掬うのがうまいから、専門性を持ってるライター/編集の依頼が取れなかったときの二番手として頼ってしまいがち」
というお話をしていただきました。

 

そう、今のところの私、二番手なんです。
自分では、「日本語が好き」という分野で一番手だと思っているのに、 この業界で生き抜くのに必要な、もうひと階層下の分野で一番手になれていない。

 

 

日本語を私より愛していない人に、専門性で負ける。

 

私の大学時代の先輩で、古着とか、ヴィンテージがとてもとても好きな方がいるんです。その方は新卒で入った百貨店を1年で退職し、現在は世界各国を飛び回って古着を買い付け、それを販売する仕事をしています。

 

仕事を始めた当初は右も左もわからず、苦戦していたようですが、YouTubeInstagramといったSNS発信がハマり、現在はファッション雑誌やライフスタイル雑誌から取材を受けるほどになりました。

 

 

その先輩の書いたエッセイが、全国地方紙で連載されることが決まったんです。

 

正直悔しかったな。
読ませていただいたのですけど、文章は粗削りだったし、「校閲さん苦労したんだろうな」という痕跡もところどころ見受けられますし。

 

けど、古着とか、ヴィンテージに対する情報がしっかりと伝わってくるんですよ。新聞として求めているのは「キレイな日本語」ではなく「確かな専門性ある情報」であることを痛感した瞬間でした。

 

 

負けたーって思ったんです。日本語をさほど愛してなくても、全国地方紙に連載が載る先輩と、日本語をめちゃくちゃ愛しているのに、「二番手」な私。勝ち負けをつけるものではないことはわかっているけれど、なんとなく「私の勝負の仕方」の正解不正解を問われている気がしました。

 

 

じゃあ私はなにを目指せば?

 

Creepy NutsのDJ松永さんが、文藝春秋社の『文學界』にて、7月号からエッセイを連載しておられるんですね。その第1回は『文春オンライン』で全文公開されているんです。

bunshun.jp

 

今では飛ぶ鳥を落とす勢いのCreepy Nuts。音楽番組や各バラエティで、彼らを見かけない日はありません。

 

でも、松永さんのこの文章を読んでいると、「あ、私と同じじゃん」ってなったんです(読んでください!)
特に4ページ目。そうです松永さん、私は松永さんみたいな「大して日本語と向き合ってもいないのに、文章で功を奏すみたいな人」が嫌なんです。

 

妬みだと言われればそうです。だけど、松永さんが「DJを大してやってもいないのに、DJを副業的に始めた芸能人のこと」を好きになれなかったように、私もその逆を文章に感じているんだと思うんです。

 

 

じゃあ、私にライティング/編集の分野として、なんの専門性をつけろというのか。

 

残念ながら、私は一つに絞れないとおもいます。野球も、読書も、音楽も、お酒も、ごはんも、ディズニーも、クルマも、全部私の好きなもので、私を構築してくれているピースだから。

 

で、その核となるのがやはり「日本語が好き」なんです。
つまり、「日本語を好き」を超える専門性が見つからないんです。

 

永遠の二番手だけど、最強の二番手になるしかないんです。

 

 

私、この戦い方で、あと半世紀以上を文章で食べていけるかな。
わからないけど、最強の二番手、なってやろうとおもいますよ。